驚きすぎて最後の方は声が小さくなってしまう。
そんなあたしとは対照的に氷メガネの声は凛としていて…。

「こっちで暮らすわけだからある程度はいるに決まってんだろ。生活費だってなんだかんだとかかるわけだしな」

「それは…そうだけど…」

「お前には聞いてねー。晴彦…正直に言って欲しい。俺は…前にも言ったけど…お前の親父のつもりでいる…。親父が息子にしてやるってのは、当たり前だろ?ただ…お前が嫌だってんなら…仕方ねーけど…」

そう言った氷メガネはどこか寂しそうな瞳になって…
あたしの胸も苦しくなった。

晴彦は黙ったまま何も返そうとしない…。
段々と気まずくなっていく雰囲気に耐えられなくなったあたしが口を開こうとした時…

晴彦がボソッと呟いた。

「…イヤじゃ…ねーよ…。ほんとに…嬉しいよ…。サンキュー…父さん…」

今…
父さんって…言った、の…?

あたしは晴彦が照れる時にする、髪をクシャクシャと掻く仕草に涙が溢れた。

そして氷メガネの方を見たあたしは、ハッとする…。
メガネの奥のアイツの瞳が潤んでいたから…。

「バカね…。男のクセに泣かないでよ…」

「泣いてねぇって!疲れ目だよ、疲れ目!」

そう言ってメガネを外し、ゴシゴシと目をこする。