「おめでとう、晴彦。よく頑張ったな…」

「敏生さんのおかげだよ。なんだかんだとお世話になりました」

ぺこっと頭を下げた晴彦に、照れ隠しのつもりなのか氷メガネは笑いながら言った。

「んだよ!改まって!やめろって、そーいうの。らしくねーって!」

「…………」

黙った晴彦に、今度は焦る氷メガネ。

「…晴彦?どーした?」

「ありがと…な、母さんの事も、俺の事も…」

「だから…俺がやりたくてやってんだから。礼とかはやめてくれ」

氷メガネはそう言ったかと思うと、「あ、そうだった」と言ってダイニングから出て行った。

そして手に小さい封筒みたいなものを持って再びダイニングに戻って来た。
その封筒を晴彦の前に置いて氷メガネはサラッと言った。

「合格祝い。今開けんなよ。帰ってからな」

「敏生さん…。…ダメだよ…もらえない…」

晴彦は封筒の中身も見ずにそう言った。

「大したモンじゃねーって。遠慮すんな。俺の気持ちって事で素直に受け取れ」

ったく…
あたしだけじゃなく、晴彦にも結構な俺様ぶりを発揮すんだから…
あたしがそう思っていると突然晴彦が泣き出した。
何が起こっているのかわからず、とうとうあたしは見ない振りをやめて二人のテーブルに近づいた。