そして楽しい時間はアッという間に過ぎて、名残を惜しみながらみんなと別れた。
一人だけ市内に住んでいない富美子は、水谷さんが迎えに来てくれるらしい。
待ち合わせの時間が迫っていると慌てる富美子に言った。

「ちょっと富美子。あんまり急いで転ぶんじゃないわよ？」

心配するあたしに富美子はいつもの癒しの笑顔を見せる。

「もぅ、子供じゃないんだから大丈夫だってば！」

見た目は大人だけど、どこまでも鈍くさいのがアンタでしょーが…。
あたしはそんな心の声を発する事なく、笑顔で手を振った。

「さてと。あたしも帰るとしますか」

うちはお店からも結構近いから、タクシーで帰る事にする。
乗り込んだタクシーの中でさっきのみんなとの楽しい時間を思い出しては一人微笑む。

富美子の姿を見たら、あたしも見習って遠距離恋愛を頑張るしかないと思った。

家に帰ると大好きな人が待ってる…。
そんな生活は確かに魅力的だし、あたしも氷メガネと離れてる事は決して平気じゃないけど。

二人で決めたんだから…
ていうかあたしが言いだしっぺなんだから。
今はジッとガマン、ガマン！

絶対今の苦労が報われる時が来るって
あたしは信じてるから…

アイツもあたしと同じ気持ちだって信じてるから…
頑張れる…。