あたしは部外者だとわかっていたが口を挟まずにはいられなかった。

「どうにかして、お兄さんの居場所わかんないの?」

氷メガネは「うーん…」と言ったまま、何も答えない。

「フランスっていっても広いもんね…。せめて地方だけでもわかればね…」

泣いていたお母さんが、顔を上げてあたしに微笑みながら言った。

「ありがとね、尚美さん。あたし、あきらめずに探してみるわ。絶対に途中で投げ出さない。あなたの姿で教えてもらったわ…。
やるだけやってみよう…ってね」

「お母さん…。あたしの方こそ…ありがとうございます…。こんなあたしを…認めてくれて…」

あたしは思わず涙ぐんだ。

「何言ってんの!あなたみたいな人が、敏生の奥さんになってくれるんなら万々歳よ?
ほら、コイツってちょっと変でしょ?変わり者っていうの?だからこのままじゃ結婚できないんじゃないかって。そんな時に香菜ちゃんとの婚約話が持ち上がって。まさに渡りに船だったわ」

そうだったんだ…。
お母さんはコイツの将来を鑑みて婚約者を決めたのか…

「でも…お父さんが官僚だから…相手を選ぶっていうのも、あったんじゃないんですか?」