「…申し訳ありません…」

悔しい気持ちを抑えて謝った。
あたしが間違ってるんだから仕方ない。

「いえ。今後は気をつけて下さいね。規則は規則です。なにごとも、ルールを遵守するからこそ、成り立つのです。特にあなたたちの仕事はセンシティヴな内容も取扱いますから、いい加減な気持ちでいると、大変な事になりますよ。
飯田さん、そうですよね?」

相変わらず嫌味たっぷり…
でも、ここは大人しく同意するしかなかった。

「では、講義を始めます。テキストの三十六ページを開いて下さい」


なんとか午前の講義は終了した。
氷メガネがそれを告げた時、既に物凄く疲労困憊している自分がいた。

昼の休憩でみんなが弁当を広げて食べ始めたけど、あたしはどうにも食欲が湧かなかった。
じっと椅子に座ったままでいるあたしに、同期のみんなが声をかけてくれる。
まず一番先に奈津子が言った。

「あれ、尚美さん、食べないんですか?」

「あー、今日は買ってきてないんだよね」

「今から行けばいいじゃないですか?」

「なんか、めんどくさい」

すると富美子も、「ダメだよ、尚美ちゃん、めんどくさいとか言っちゃ」とダメ出しをする。

「食欲ないの?ちょっとは食べといた方がいいよ?」

恭子も心配そうに言ってきた。