何も答えない香菜さんにお母さんは続ける。

「敏生はなかなか人を信用しない子だけど…いったん信じたらとことんまで突き進むタイプで…」

すると香菜さんはそこでお母さんの言葉を遮って話し始めた。

「…おばさま…。もう…いいです…。これ以上言われたら…あたし、惨めすぎます…」

「あっ…ごめんなさいね…。あたし…気が付かなくて…」

慌てて謝るお母さんに香菜さんは笑顔を見せながら言った。

「ほんとに、似てますよ、おばさまと敏生さんは」

お母さんが驚いたのと同様にあたしも驚いてしまう。

似てるかな?
お母さんと、コイツって…?
顔は…
確かにあの鬼瓦のお父さんと比べるとどっちかっていや、お母さん似だとは思うけど。

メガネをとった時のアイツのイケメンぶりは、どう考えてもお父さんのそれではないもんね。

あたしが顔の事を考えていると、香菜さんはまったく違う、あたしにも知らされていなかった話を始めた。

「敏生さんにも同じ事言われたんです。飯田さんと別れる事は絶対ない…って」

そう…なんだ…。
アイツ香菜さんにそこまで言ったんだ…。

ほんと香菜さんには申し訳ないけど、あたしは心底氷メガネの気持ちが嬉しかった。
お母さんは香菜さんの言葉を受けて彼女の顔をしっかりと見つめながら言った。