あたしは細かい所までは知らないけど、想像の範囲で思いっきり言ってやった。

「どこの馬の骨ともわからん女に、そんな事を言われる覚えはないわ!
今すぐ出て行け!敏生も二度とこの家の敷居をまたぐことは許さん!
お前も悠生と同じだ!勘当だ!」

響き渡るほど怒鳴ったお父さんを見てお母さんがポツリと言った。

「…では…わたしも…出て行かせて頂きます…。長い間、お世話になりました…」

えっ? 何?
どーなっちゃったの、おかーさん?
今の話はあたしの作り話ですよ?

氷メガネも香菜さんも、驚いた顔でお母さんを見ている。
言った張本人のあたしですら、驚きを隠せないでいるんだから。

全員が呆気にとられてお母さんを見つめる中、さっきまでとはガラリと雰囲気が変わったお母さんが口を開いた。

「敏生。アンタのマンションって部屋に余裕あんの?」

えっ? 今のは?
えーっと…
セレブ奥様の言葉…ですよね?

「あ…あるには…あるけど…。まだ片付いてないし…その…」

氷メガネが歯切れ悪くお母さんに言う。

「あーごめんごめん。カノジョと水入らずだったね!邪魔するなんて野暮な事はしないって!とりあえず今夜はホテルに泊まるからさ。明日からは宜しく頼むわ」