「なんだと?誰に向かってそんな口をきくのか、よく考えろ!」

ほんとにもうわかりやすく短気なんだよね、この手のオッサンは。
自分がすごいと勘違いしちゃってるからさ。

「誰ですかね?ただのオジサンだと思いますけど」

「この…優しい顔をしていれば、つけあがりおって!」

お父さんは益々顔を真っ赤にして怒り出した。

「全然優しい顔なんかじゃないですよ。どっちかっていうと、強面!
そういう顔は警察ではいいかもしれませんけど、営業には絶対向きませんね!」

とうとうお父さんは立ち上がった。

殴られるかもしれない…。
でも…負けるもんか…。

「アンタ、自分の奥さんの事を考えた事あんの?ていうかさ、自分の奥さんの好きな食べ物とか趣味とか、知ってる?」

「なんの話だ!?そんな事はどうだっていいだろう!」

「良くないんだよねそれが。奥さんはさ、お金よりも家よりも車よりも、アンタに家にいてほしかったんじゃないの!?
それで普通の家族みたいに、四人でどっか行ったり、一緒にごはん食べたりしたかったんじゃないの?けど、それをアンタがさせなかった。奥さんはアンタに認めてもらいたいがために、上役の奥さん連中に取り入って、アンタの出世を助けた。けど出世すればするほど、アンタはもっと家に帰ってこなくなった。そして大切な息子まで…追い出して…」