そこで今まで沈黙を貫いてきたお父さんが口を挟む。

「敏生…。そこまで覚悟ができているなら…。お前を勘当しても、文句はないな?」

えっ?
なんでそーなるわけ?
よっぽどあたしが気に入らないって事なのね?

「ないね。むしろ勘当してくれって思ってるけど」

ちょっと、ちょっと、それはヤバいって!

「わかった。望むようにしてやろう」

「あなた!本気ですの?悠生さんを失って、また敏生さんまで失ったら…私はどうしたら…」

そう言ってお母さんは泣き崩れた。

あたしはずっと、お父さんにもお母さんにも何も言う気はなかった。
けど、このお母さんは…
もしかしたらずっと…
お父さんに逆らえずにいたんじゃないかって気がした。

そう思ったら…言わずにいられなくなった。

「お父さん…ちょっとよろしいですか…」

あたしは氷メガネのお父さんに話しかけた。

「君にお父さんと呼ばれるいわれはないな。敏生とも縁を切るならなおさらだ」

相変わらず慇懃無礼さは健在だ。

「…じゃー、アンタって呼ばせてもらうわ」

あたしの言葉でお父さんの顔が明らかに曇った。