あたしは喉が渇くくらい一気にしゃべった。

香菜さんはうつむいたまま顔をあげようともしない。
あたしはどうしていいかわからず氷メガネの方を見た。

氷メガネはそのメガネの奥の瞳を優しく細めて、あたしを見てくれていた。
それだけであたしの心は満たされていく事を感じる。
あたしも思わず氷メガネに微笑みかけていた。

「ハハ…アハハハ…」

突然香菜さんが笑い出す。
あたしは驚いて香菜さんの方を見た。

「何がおかしい?香菜?」

氷メガネが香菜さんに尋ねた。

「だって…おかしいじゃない。今の敏生さんの顔…おかしすぎて笑っちゃったの!
何よその、デレデレした顔は…。そんな顔…初めて見たわよ…。小っちゃい頃からあなたを見て来て…一度だって…そんな顔…。
甘いもの食べてる時だって、あたしには、そんな緩い顔見せなかったっていうのに…」

そうなんだ…。
あたし、甘いモン食べてる時はいっつもあの顔してるんだと思ってた…。

「だから…コイツにだけは、ほんとの俺を見せられるんだよ…。他の誰でもダメなんだ…。コイツしか…俺には必要ない…」

なんて感動的な…
今すぐ抱き着きたくなるような事、言わないでってば!