「詭弁ね…。あなたの言ってる事は…」

香菜さんはうなだれながらそう言った。

「そう、思われるなら…仕方ないです…。でもあたしは…いつでも敏生さんの事を思っているし、苦しい時でも悲しい時でも真正面から受け止める覚悟を持っています。それが…あたしと敏生さんが今日まで積み重ねてきた間に、学んだ事です…。たくさんケンカして…、自分の思ってる事を全部隠さずに話してきたから…言える事です。飾らない自分を見せる事ができるから…。
いい所だけを見せてても、続きません…」

「だったら聞きますけど。どうして前のご主人と離婚なさったの？あなたのおっしゃるように相手を思う事が、どうして前のご主人にはできなかったの？」

あちゃー…
そう来るのね…
やっぱり。

それはあたしも思ってるよ。
前の結婚ではできなかったわけだからね。
説得力ないよね。

「それを言われると何も言えません…。正直、前はこんな風には思えませんでしたから…。お互いに思いやる事ができなかったから、離婚になったんだと思います。でもそれを経験したからこそ、今度はそうはしないって思えるんです。
それに、結婚生活は片方だけが努力してもうまくいかないと思います。
お互いに努力しなければ表面的にはうまくいってるように見えても、それは多分どちらかが我慢してるんだと思います…」