「だから?なんかカンケーあんのかよ?」

「関係ない筈がないだろう。仮にもお前はこの伊藤家の跡取りだぞ。ゆくゆくはお前もこの家の主になるわけだからな。その伴侶としてふさわしい女性を選ぶのは、お前の責務だ」

またまた時代劇でも聞いたことあるようなセリフ…。
まさか目の前で見る事になろうとは!

「跡取りが聞いて呆れるな。この家の跡取りは、俺じゃなくて兄貴だろ?」

兄貴…?
兄貴って…お兄さん?

えー!
氷メガネにお兄さんいたなんて、これまた初耳だよ…。

悠生(はるき)は勘当したんだ。伊藤家とは関係ない人間だ」

「そうだったな。今みたいに兄貴のカノジョの事を色々と暴いて付き合いに猛反対して追い出したんだもんな?」

氷メガネは薄ら笑いを浮かべながら、蔑むようにお父さんに言った。

「敏生さん、いい加減になさい。お父様に向かって、なんて物言いなの?悠生さんの事はわたくしも心残りでならないの。あの子は悪くないのに…相手の女のせいでこうなったのよ?あんな犯罪者の娘なんかに振り回されて、挙句の果て、海外へ逃げなきゃいけないなんて…。だから、敏生さん…あなたにだけは、間違いを犯して欲しくないのよ?」

犯罪者の娘?
海外へ逃げた?
あたしはこの人たちの言ってる事が理解できず、頭がパンパンになっていた。