あー、タバコ吸いすぎてクラクラする…。

氷メガネの研修当日。
あたしは朝からイライラを鎮めるために、いつもの倍の本数吸ってしまっていた。

今からこんなんじゃ対面した時にマズイよね…。

あたしは最後に氷メガネと話した時のやりとりを、思い出したくもないはずのあの光景を、思い出していた。
そんな事をしているといつのまにか、かなりタバコが短くなってしまっていた。

そのタバコを灰皿で押しつぶす。

大丈夫。
あんなヤツには負けない。
バカにしたけりゃすればいい。
いちいちアイツに振り回されてたまるか。

あたしは気合を入れ直し家を出た。

会社に到着すると、駐車場で富美子と恭子に会った。

「おはよう～！尚美ちゃん！」

毎日一日中一緒にいるあたし達同期はすぐに親密になり、自然にお互いをニックネームや下の名前で呼びあうようになっていた。

いつも元気に挨拶するあたしが、今日は心からの笑顔で挨拶できない。
そんなあたしの変化に富美子がいち早く気付く。

「あれ…？尚美ちゃん…。なんかあったの？もしかして、体調悪い？」

「え？なんで？いつもとおんなじだよ？」

あたしは何食わぬ顔でそう答えたが、富美子は納得していないようだった。

「そう…？なんか違う気がするんだけど…」

「気のせいだって。大丈夫だよ、ありがとね、心配してくれて」