あたしが住んでるとこも和菓子どころとか言われてるけど、どーにもなじめない…。

甘いモノが苦手なあたしは、洋菓子以上に和菓子がダメ。
その中でも断トツに食べられないのが羊羹。

「なんだ?羊羹じゃ不満か?別にお前に食えって言ってねーし」

ハハ…。
やはりおわかりになったご様子ね…。

よかったよ、食べなくていいなら。
アンタは絶対間違いなく好きそーだけどね。

デパ地下の和菓子コーナーにあるお店に到着し、氷メガネは三種類の羊羹のセットを購入した。

お金を出すと言ったあたしに、「気を遣わなくていい」とだけ言って受け取ってもらえなかった。

店員さんが手提げの紙袋ともうひとつ小さい紙袋を氷メガネに手渡した。

あれ?
いつの間に二つも買ってたんだろ?
ていうか小さい方は誰に買ったんだろ?

車に乗って氷メガネの実家へ向かう途中、あたしは気になっていた小さい袋の事を聞いてみた。

「ねえ、あの小さい方も渡すの?」

「あ?あれは俺用」

はいっ?
俺、用って、アンタ用だよね?
あたしはわかりきったことを自分の頭の中で確認する。

「アンタの分って事?」

「そーだよ。あれはね、小型羊羹っていって、ちっちゃめな羊羹。片手で気軽に食えるの。だからケータイ用」

ケータイ用って?
ケータイしていつでも食べられる的な?
あの、不規則な食事しかできない人が簡単にエネルギーをチャージできるとかいう、あの種の食べ物と同じ用途みたいな?