優しく指で涙をすくってくれる氷メガネの顔を恥ずかしくて見る事ができない。

「誰の…せいだと、思ってんのよ…」

そして心とは正反対のかわいくない言葉をすぐ吐いてしまう。

「全部俺にだけは見せて。涙も、笑顔も、他のヤツには絶対見せないほんとのお前を…」

そんなの…
言われなくたってそうなっちゃってるわよ!
アンタ以外にあたしの全てを見せられるような人、いないんだから…。

「見せてるわよ…。アンタ以外には絶対見せないような素の自分を…。恥ずかしいから隠したいのに…。アンタはすぐに剥いじゃうんだから…」

「…ん…。それなら…いいよ。お前のどんな姿でも、俺には全部大切だから…」

もぅ…
ホントにあたしを喜ばせる天才なんだから…
胸が締め付けられるくらい愛しさで溢れて来る。

「その顔…反則…」

氷メガネはそう言ってメガネを外しあたしの唇にそっと口づけた。

その後は
今までの寂しい気持ちを埋め尽くすように
飽きるほどお互いの愛を確かめ合った。

どこまでも本能に対して貪欲で。
それでいて気力も横溢で。

仕事中のコイツは恬淡(てんたん)として生きているように見えるけど、こと、恋愛に於いてはこんなにも変貌する男なのだ…。