一対一でアイツと過ごすくらいなら、まだ同期のみんなと一緒の方がマシだ。
あたしはあきらめて所長に言った。

「仕方、ないですね…。明日、なんとか、都合つけてみます…」

「ほんと、ごめんね!申し訳ない!今度なにか埋め合わせしよっか?そうだね、クリアファイルは渡したから…。あとは…下敷きとか?」

下敷きって…全く使い道ないし!
ていうか所長…。まさかあなたのあのイラストで埋め合わせするおつもりですか?

「所長…お気持ちは有り難いですけど…あのイラストは…」

「遠慮しなくていいって!俺も趣味程度で恥ずかしいんだから!」

絶対恥ずかしいなんて思ってないでしょ…。
恥ずかしかったらそもそも人に渡したりしないから。

「もらったこっちの方が恥ずかしくなりますから」

「え?」

「いえ…なんでもないです。とにかく大丈夫です」

あたしは所長に突き放すような言い方をした。

所長は何を勘違いしたのか掌を合わせてあたしに謝り倒す。
元々はあたしが氷メガネを避けたくて言い出したワガママなんだから所長が謝るのはおかしい。
根本的に所長は悪くないんだって。

「もう、そんなに謝らなくていいですから」

そう言って営業所を後にした。

帰る前に車の中で一服しながら、明日の自分の出方を考える。
とにかくアイツの目につかないように、明日は大人しくしとけばいい。

あたしはそう決心した。