「ごめん…」

氷メガネはやっとの事でそれだけを口にした。
そして床に落としたあたしのスカートを拾うと、軽く畳んでベッドの隅に置いた。
今度は自分のスーツの上着を拾い、サッと羽織るとそのままドアに向かって歩き出した。

あたしは驚いて、咄嗟にベッドから降りて追いかける。

「ちょっと…待って!帰るの!?」

振り向いた氷メガネはあたしの格好を見て呟く。

「そんなカッコで外出るなよ?襲われても知らねーぞ…」

それを…アンタが言いますか…?
今まさにあたしを襲おうとしていたのは、アンタデハアリマセンカ?

黙ったままのあたしに氷メガネは言った。

「今…戻ったら…襲わないって約束できそーにねーけど…、いいのか?」

そっ、それは…、同意の上ならそういう事にはならないんじゃ、ないの?

「あっ、あたしはっ、別にっ…い、嫌ってわけじゃ…」

「お前さ。ドアについてるのぞき穴から来訪者確認できるって知らねーの?」

はい?
ドアの…のぞき穴…とは…?

あたしは氷メガネに言われてドアの方を振り返る。
よーく見てみると、ドアの中央やや上付近に小さな丸いものが見える。
近づくとレンズのようになっている。

「その中、のぞいてみ」

言われるがままのぞいてみると…
なんという事でしょう…。
廊下の赤い絨毯が見えております…。