だけどアイツが住んでいる東京に今自分もいるんだと思うと、そんな決心はいとも簡単に崩れそうになる。

顔が見たくて、声が聞きたくて…
とにかく会いたくて…
少しでも長く一緒にいたくて…

頭がおかしくなりそうだった。

やっぱり素直に電話しようか…。
あたしは携帯を握りしめたまま、どうする事もできずにいた。

そして椅子に腰かけてただ窓から景色を眺める。
ボーッと座っていても心はとっくに氷メガネの所まで飛んでいってる…。
どれくらいの時間その態勢でいたのか…。

再びタバコを取り出し火をつけようとした時、ドアをノックする音が聞こえた。

東京に。
日本一の大都会にいるという事は、田舎者のあたしを最大級の警戒モードに切り替える。
もしかしたら…犯罪者?
田舎者特有の都会イコール犯罪という図式がすぐ頭に浮かんで、あたしは何の反応もできず息を殺して座っていた。

すると再びドアがノックされ、あたしはビクッと体が震えた。

その瞬間…
ドアの向こう側からいるはずのない人の声がした。