「女に二言はないわよ!絶対に怒らないから」

あたしが毅然とした態度でそう言うと、晴彦は少し顔を赤くさせた。

ん?
なんだなんだ?
照れてるの?
なんか顔が赤くなってくけど?

「実は、さ…。俺…付き合ってる子…いんだけどさ」

「えぇーーー!?何それ?聞いてないんだけど!」

あたしは初めて聞く息子の恋バナに驚きを隠せなかった。

「言ってねーし。今初めて言うし。…で、カノジョが東京で美容師の専門学校行くんだよ。だから…その…俺も東京でって…思ったんだ…」

そーいう事…
けど、なんで?
あたしにだって話せそうな内容じゃない?

「それだったら…言ってくれればよかったじゃない…。なんでアイツにだけ…」

あたしが言いかけると、晴彦は突如割って入ってきた。

「敏生さんは悪くないからな!俺が…急に進路変更したいって、しかもそれが東京なんて…。母さんに言いにくいって言っただけだから!」

やっぱり…経済的な問題が晴彦の言いにくかった原因?
ほんとに子供に気遣わせて…情けないったら…。

「わかったわよ…。それはもう、いいから」

「で…その…同じ気持ちの者同士、助け合おうぜって事になって…。それで、敏生さんが東京には詳しいからって、色々教えてくれて…」

同じ気持ち?
なんじゃそりゃ?

「どういう意味?同じ気持ちの者って?」

晴彦はさっきよりも、もっと顔を赤くさせた。