黙る晴彦を見て考える。
もしかすると晴彦は、あたしが怒ると思って何も言えないのだろうか…?

「どうしたの?アイツの誘いにアンタの気持ちが揺れたにしても、それは仕方ないし、別に怒ってもないわよ?」

「いや…実はさ…。敏生さんが誘った訳じゃなくて…。俺が、東京の大学、志望してたんだ…」

え…?
氷メガネが自分の都合で勧めたんじゃない…の?
晴彦本人が…
希望してたって…
事なの…?

でも進路相談の時、担任の先生だってそんな事言ってなかったじゃない?

「そうなの…?いつから?」

「…………」

晴彦は黙ってしまって、そこから一向に口を開こうとしなかった。

「晴彦?ほんとに怒らないから、言ってよ。
アイツには言えて、なんで母さんには言えないの?」

「…………」

「わかった…。今からアイツに電話して問いただす。なんであたしには言えないのか問い詰めるから!」

「聞いたって絶対敏生さん、口割らねーと思うよ」

晴彦はシレッとしてそう言った。

「あっそ!わかった。じゃあもう母さん、アイツとは別れる。隠し事してるような人は信用できないから!」

思い切って言ったあたしに、晴彦はわかりやすく動揺した。

「ちょ、ちょっと待てって!わかった…言うよ…。でもほんとに怒んなよ?」