晴彦はうつむいて何かを考えているような様子だったけど、すぐに顔を上げた。
そして真剣な眼差しであたしに言った。

「敏生さん、母さんと離れてる事が不安だって。こんな俺に相談してくれてさ。あの人ってほんと純だよな。正直で真っ直ぐで…。こんなに母さんに惚れてくれる男、もう絶対いないぜ」

まあ…
それは…
あたしも恥ずかしながら自覚してる部分ではあるけどね…。

「それは…まあ、いいから…。で?毎日どんな話してたの?進学の事も…相談してたみたいだけど…」

「ゲッ…ほんと全部ゲロってんじゃねーかよ…。男の約束が聞いて呆れるな…。まあその…話ってのはあれだよ。母さんの事がほとんどだって…。で、進学の事は…敏生さん…なんて言ってんの?」

いや…
だから今、それをあたしが聞いてるんであって…。

「今、母さんが質問してんのよ?なんでアンタが聞いてくんのよ?」

「…それは…。男同士の約束っつーか…。いいよ、別に。そっちが言いたくねーなら俺も言わねー」

って…
何なのよ、それは…

しかもそのふてぶてしい態度…。
晴彦のヤツ、血が繋がってるわけでもないのに態度がアイツそっくりなんだけど…。

「わかった…。アンタに東京の大学受験してみないかって、アイツ、そう言ったそうね?」

「え?…えっと…。うん…まあ、そうだけど…」

晴彦は急にシュンとなった。