「うちの親の事わかってるから言ってるんだよ…。お前にどんな事言うかと思うと、な…」

いつも強気な氷メガネにしては珍しく弱気な発言に、ご両親はよほど癖のある人なんだろうと想像してしまう。

「ヒドイ事…言われるのは慣れてるわ…。この仕事してたら、ほんとに色んな人に出くわすから…。アンタの親御さんと一緒にして悪いけど、少々の事は、大丈夫よ?」

そりゃ…
イヤな事言われたら傷つかないわけはないけど…
でも氷メガネのご両親の思いを全て受け止められなければ、結婚してもうまくいかないような気がする。

「…………」

いつ何時だってはっきりキッパリ言い切る氷メガネと同一人物とは思えないくらい、あたしの目の前にいるこの人は弱々しく見えた。

そんな顔…
しないで…
お願いだから…。

でも、ここで情にほだされちゃいけない。
あたし達の幸せな未来の為には絶対に通らなければならない道なのだから。

あたしは苦しい気持ちを隠しダメ押しの言葉を放った。

「結婚するならご両親に会う。会わないなら結婚しない。このどっちかしか、考えてないから」