あたしの答えに氷メガネが呆れたようにため息をつく。

「はぁ…。お前ね…。俺が一大決心をして言った事、もう忘れたってのか?」

あ…
そう…だった…。
晴彦の話にびっくりしすぎて元々の話を忘れてたわ…。
確かに晴彦の進路が決まればあたしの心配のひとつは解決される。
親としての責任も、ちょっとは果たせたかなって…思える。

だけど…
やっぱり結婚するっていうのは難しいんだよね…。
本人同士の気持ちだけじゃ、できない。
ハタチそこそこの若い女ならまだしも、人生の辛酸を舐めた身としてはきちんとまわりの事も考えなきゃいけない。

晴彦以外で気になって仕方のない事。
氷メガネの異動のバタバタで、うやむやになってたけど…

「アンタの気持ちは嬉しいけど…。結婚ってのはやっぱり、本人同士がいいからってだけで決めらんないでしょ?…だいたい、ご両親は認めたわけ…、あたしとの結婚…?」

氷メガネは黙ったまま何も答えようとしない。

あたしはさらに責めた。

「まず何よりもそれが先でしょ?前にも言ったけど…、縁切るとか、ダメだからね…。認めてもらえないかも、しれないけど…それでも、勝手には結婚できない、から…」