「あたしがアンタと結婚するからって、晴彦の人生を巻き込むつもりはないの。晴彦は晴彦の好きなようにして欲しい…。東京の大学なんて、あの子が行きたいかどうかわかんないでしょ?」

あたしがそう尋ねると。
氷メガネは少しだけ目を伏せ、何かを考えてるような表情を見せる。

「…うん…。やっぱ、ちゃんとお前が晴彦と話した方がいーかもな…。俺だけが話してるってのも、変だし…な」

そんなの、当たり前でしょーが…。
今更何言っちゃってんのよ…。

晴彦が…
アンタを本当の父親より頼ってるっていうのは、あたしも嬉しいけど…。
あたしの事も…少しは頼って欲しい。

「頼りないのは承知だけど…。あたしの事も頼って欲しいの…。これでも母親なんだし…」

「アイツはちゃんとお前の事も頼りにしてるって。今までお前がアイツを育てる為に一生懸命頑張ってたのも、わかってる…」

「…うん…」

あたしは一度、晴彦とゆっくり話をしなければいけないと改めて思っていた。
忙しさにかまけて、あの子の人生の大切な時期をもう少しで見逃す所だった。

「ちゃんと…話してみるわ…。それで晴彦の本心も聞いてみる…」

氷メガネは優しく瞳を細めて頷いた。

「…で…。どーなんだよ、お前の気持ちは?」

「は?何、あたしの気持ちって?」