「晴彦に色々お前の様子聞いて…。お前が毎日無理してんのも、全部わかってた…。異動する時もいっそのことお前を連れてこーかって考えたけど…。お前が晴彦の事を心配するのはわかってたから…晴彦に東京の大学受験する事、勧めた」

あたしはやっとの事で言葉を発する。

「でも…東京の大学なんて…予定してなかったから、無理なんじゃ…」

「ダメならまた次があんだろ」

また次って…
浪人させるの?
そんなお金…あるわけない…。

「心配すんな。俺に任せろ」

氷メガネはあたしの不安の理由を知ってか知らずか、そう言った。

「アンタの気持ちは嬉しいけど…。晴彦の事はあたしがちゃんとするから。アンタの世話にはならない…」

「変な意地張んな。晴彦の進学は俺にだって関係ある。晴彦の…父親になるんだからな」

だからって…
いくらなんでも学費までコイツの世話になるわけにはいかない…。

これは…
母親としてのあたしの責任だから…。

「でも…何もかもアンタにおんぶに抱っこじゃ…ダメよ…」

「現実的に考えろよ。東京の大学に受かったら、生活のために準備するものが山ほどあるんだぞ?」

そんな事わかってる…。
わかってるから…
悩んでるんじゃない…。