唇を離すと、再びあたしを強く抱き締めて氷メガネが言った。

「尚美…。結婚しないか…?」

はい?
そりゃまたストレートにおっしゃいます事…。

「もう、離れてる意味なんか…なくねーか?なんの為に離れ離れになってんだよ、俺達?」

確かに、そう言われてみれば…
そう…かもしれない…。
けど、だからって結婚するのに何の障害もないってわけじゃない。

晴彦の事だってある。
今まで…
あの子に親らしい事なんてしてやってない。
片親だった事で不自由させたのにグレる事もなく。
だからせめて…進学だけは、晴彦の希望を叶えてやりたい。

そう思っていると、再び氷メガネはあたしの心の声に答える。

「晴彦なら…大丈夫だ…。東京の大学も受験できる準備できてっから」

え?
…何なの…、その話?
東京の大学なんて…
全く初耳なんだけど…?

あたしは何がどうなっているのかわからず、何も言う事ができない。
黙り込むあたしに氷メガネが続ける。

「尚美…。正直に言うけど…。実はさ…、俺…晴彦と毎日メールしてんだよ…」

は?
何よ、それ…、どういう事…?
あたしには毎日メールなんてしてくれなかったのに…
まあ、それは今どうだっていいけど…
晴彦が…コイツに進学の相談までしてたの…?