「入院してる時にね、夢を見たの…。追いかけても追いかけても…つかまえられない…。
それで姿が見えなくなって…」

そこまで言いかけた唇を再び優しく塞がれる。
抱き締める腕にさらに力がこもって、あたしは動けなくなる。

「怖い思いをしたな…。そんな時にそばにいてやれなくて…ほんとにごめんな…」

あたしは氷メガネの温かい腕に抱かれながら、いつしか恐怖が薄れていくのを感じていた。

「体…大丈夫?」

突然言葉を発した氷メガネを驚いて見つめる。

「え?」

「痛い所とか、頭痛は…?」

「ない…けど…?」

「まだ無理はさせられないと思ってガマンしてたけど…。やっぱ俺が無理」

氷メガネはそう言ったかと思うと、あたしをヒョイとお姫様抱っこする。

え?
何?
どこ行くの?
あたしは抱っこされたまま部屋に連れて行かれる。
まるで違う部屋と化したその場所にあるベッドの上に寝かされた。

「無理なら言って…。今ならなんとか…止められるかもしんねーから…」

切ない瞳で見つめながらそう言った氷メガネにあたしの切なさも募る。。

「無理じゃない…。お医者さんも大丈夫だって言ってたし…」

「身体は大丈夫でも…。お前の気持ちが…どうなのかと思ってな…」

「そんなの…決まってる…。あたしもずっと…寂しかったんだから…」

あたしはいつもは絶対に見せない素直な自分になって、そう言った。