「あの…ハタキというのは…ハンディモップで、いいのでしょうか…?」

あたしは上目づかいで尋ねる。

「何でもいいから早くしろ」

あっ!
はいはい、わかりましたっ!

あたしは上役に命令された兵隊のように、チャッチャと言われたものを持って行った。

「お前は休んどけ」

氷メガネはそう言って、あたしの部屋の中へ消えて行った。

ガタゴトやらガーガーという音がしばらくの間聞こえて、やがて静かになった。
氷メガネはハンディモップと掃除機を持って、あたしの部屋から出てきた。
バツの悪いあたしは氷メガネの顔をまともに見る事ができず、目を逸らせているといきなり腕をつかまれた。

そして座っていたあたしを立ち上がらせると、そのままそっと抱き締めた。

「余計な事で手間取らせやがって」

「ご、ごめんなさい…」

あたしが謝ると、それを遮るようにすぐに唇が重なった。
久しぶりの温かさに涙が溢れる。
コイツといるとどうしても涙腺が弱くなってしまう。

「もう大丈夫だから…泣くな…」

氷メガネが唇を離して優しくささやく。

「だって…、ほんとは…すごく怖かった…。
もう二度と会えなかったら…どうしよう…って」

あたしは嗚咽で途切れ途切れになりながら、気持ちを伝えた。