担当医のOKが出て、しばらくすると警察の人らしき二人が病室に入ってきた。
看護師の立ち会いのもと事情聴取が始まったが、意外に優しくて恐れるほどではなかった。
警察が帰った後、再び一人きりになった病室にすごい勢いで飛び込んで来たのは、息を弾ませた麻美だった。

「すいません!飯田さんはここですか!?」

ベッドに横になっているあたしに気づいて、麻美が駆け寄る。

「尚美!大丈夫!?」

「あ…ごめんね。戻れなかった、時間までに…」

「バカ!そんな事はいいから!怪我は?大丈夫?」

「うん…大丈夫…」

ハーッと麻美は大きく息を吐き出して、椅子に座った。

「ビックリしたわ…。警察から電話があって、アンタが事故って病院に運ばれたって聞いて…。六時ごろには戻るって言ってたのに、七時になっても帰ってこないわ、連絡もないわで心配してたところだったからさ…」

「ほんと…ごめんね…」

あたしは再び麻美に謝った。

「謝んなくってもいいよ…。無事でよかったわ…」

「さっき、担当の先生が診察してくれて、脳波の検査で異常がなければ明日退院だって。また一週間後に経過観察だけして、それでなんともなければ大丈夫らしいの…」

「そっか…。でも、ほんと、大したことなくて安心したわ。とりあえず所長には報告しといた。ゆっくり休んでって。仕事の事はあたしがかわりに行けるとこは行くし、所長も何件かのお客さんとこは尚美のかわりに行ってくれるって。で、残った所は事情を説明して、来年改めて挨拶に行くって言っといたから」

麻美と所長は仕事の事だけでなく、事故の後処理までやってくれていた。