第二営業所の所長は、二人の言う通り自信過剰を絵に描いたようなヤツだった。
でもアイツに比べたら全っ然、マシ。
今のところ、アイツが最強…

一日の講義が終了し帰る仕度をしていると、福富トレーナーが部屋に入ってきた。

「みんな帰り際にごめん!明日なんだけど、急遽講師が変更になるんだ。テキストも変わるから、間違えないで。明日は伊藤内務次長の研修になるの。だからテキストはピンクの二だからね」

あたしは耳を疑った…。
伊藤…、だと?
あの氷メガネが講師だと?
あたしの人生史上、最悪、極悪、凶悪で…
そして最高にムカつく男が…

あ~、ヤダ!明日、休みたい!

でも休んじゃダメなんだよね。
試験までは必須科目を全て受講してないと、受験資格が得られない。
やむを得ない理由で休む場合は、試験までに補講を受けなければいけないのだ。

いや、待てよ。
なんなら補講の方がいいんじゃない?
補講は自分の所属する営業所の所長が行うんだから。

あたしにとっては絶対、そっちの方がいいよね…。

あたしはそのまま、階段で営業所のあるフロアへ向かう。
ヒールだから転ばないように気をつけながらも、全速力で駆け下りた。