車に乗り込んで一番最初に行く予定の顧客に再確認の電話を入れ、あたしはとりあえず一服した。

あ、そういえば、所長からもらった絵…。
焦ってすぐ丸めたから、ちゃんと見てないんだった…。
あたしは私用のバッグに入れた絵を出して広げた。

そこに描かれているあたしは、さっきチラッと見た時に気づいてたけど何故か着物姿で。
隣に描かれた氷メガネは普通にスーツという…
なんかよくわかんないコンセプトなんだけど…。

でも…
絵の中の氷メガネは、あたしの隣で柔らかく微笑んでいる。

所長、なんでアイツのこんな顔知ってんの?
そう思えるほど絵のアイツはあたしと一緒にいる時のアイツそのまんまだった…。

ほんと、所長が自画自賛してた通り会心の出来ね…。
飾るのは恥ずかしすぎだけど、あたしの部屋にこっそりしまっとく位なら…
してやってもいいかな…。

でもこれ、氷メガネに見せたら…マズイかな…?
アイツはいい感じに描かれてるけど、なんせあたしが…
いつもみたいにすごーくデフォルメされちゃってるし…

いや、いつも以上かも。

『尚美はこんな顔じゃない』

ってキレるかもね。
ほんでもって、所長を職権乱用で制裁するかも。
あたしはその場面を想像して、クスッと笑い、車を出した。