言われた通り朝礼後に資料室へ向かう。

二階の廊下の突き当たりにあるその部屋は、普段は滅多に使う事のない場所。
一説には社内恋愛中のカップルの聖地、とまで言われてるらしいけど…

間違っても所長とあたしはそれとは無関係!
って、誰も疑ってない…か…。

資料室の重たいドアをよいしょと開けると、すぐ近くに所長が立っていた。
しかも書棚に片手をかけて、決めポーズのつもり?

ほんっとにうちの会社の男って変わりモンが多すぎる!

「飯田さん、ごめんね。呼び出したりして」

所長はいつもの爽やかな笑顔をたたえながら、あたしにそう言った。

「いえ…あたしも聞きたい事、ありましたから…」

「あの絵の事でしょ?」

わかってんじゃない…。
そうと決まれば話が早いわ…。

「はい。所長…あれって…あの絵って…。あたしの隣に描いてあった人は、その…」

ハッキリと聞きたい本音に反して、出た言葉はなんとも歯切れが悪い。

「今朝ね、内務次長…じゃなかった第一グループ長から電話をもらってね」

は?
氷メガネが朝っぱらから所長に電話って?
あたしとの電話切った後?
一体何の用で?
ていうか、やっぱりあの絵はアイツだったのよね?

「それでその…。僕が…飯田さんに何か迫ってるとかなんとか…」

はい?
嘘でしょ?
まさかそんな恥ずかしい、あり得ない事を?