「あれね、飛行機のチケットがとれなくてダメになったから」

あたしがなんでもない事のようにサラリと言ったのに晴彦は…

「ふーん…なるほど…。それか?ケンカの原因は?」

そう言って笑った。

「なっ、何、言ってんのよ!違うわよ!」

慌てて否定するあたしをニヤケた顔で見る晴彦。

「まあ、あの人も母さんにベタ惚れみたいだから、な。さみしーんじゃねーの?」

ちょっと、何その話?
詳しく聞きたいんですけど。

「どういう意味?アンタなんか知ってんの?
アイツからなんか聞いたの?」

「おっと…。こっちにもいたよ、ベタ惚れなヤツ」

「そんな事どうだっていいじゃない。わかるように説明して…」

あたしが言いかけた言葉を阻止して晴彦は真剣な顔で続ける。

「詳しい事は言えねー。敏生さんの事裏切るわけにはいかねーし。けど…とにかくあの人は、母さんにベタ惚れだからさ。心配すんなって事だよ」

なんか…息子に諭されてる…。
情けないわよね…。これじゃどっちが親かわかんない。

「うん…わかった…」

ここは素直に言う事を聞く。

「でも!」

あたしは思わず叫んでしまった。

「なんだよ?」

驚いてあたしを見た晴彦に言ってしまう。

「でもね…、怒って電話切られちゃった、のよ…。あたしはただ…心配だった、だけ、なのに…。なんでわかってくれない…のか…」