「あたしにだって、責任があるのよ…。今は一番下っ端のぺーぺーだけどね?契約してくれたお客様には最終日にも挨拶行ったり、その日しかアポ取れないって事も、あるの。だから、自分の都合だけで休みは取れない…」

『お前…俺と仕事と、どっちが大事なんだよ…?』

嘘?
今どき、こんなベタな事言う男がいるんだ!
ちょっと化石モンじゃない?

「アンタね…。そういう事は言っちゃいけないでしょ?」

『なんで?』

あーーー!
もうっ!
ほんとにコイツは!

あたしは言っても仕方ないと思い、そのまま黙った。

『ゴメン…ちゃんとわかってるって…。ちょっと…言ってみたかっただけ、だから…』

氷メガネはか細い声でそう言った。

あたしだって…
ほんとは何もかも投げ捨ててアンタに会いに行きたい。

けど、それができないし、しちゃいけないの。

「三十日の朝、一番の飛行機で、行くから…」

あたしはそう言ってなんとか氷メガネを納得させた。

そしてチケットを取ろうと検索したが…
当たり前のように年末年始の東京行きなんて、あるはずがない…。

そうだよね…
一番人が動く時期にあるわけないか…。
あたしは打ちひしがれる思いで検索画面を消した。