「めちゃくちゃ冷静じゃないの…。泣いたりするから、切羽詰まってんのかと思ったわよ…」

『晴彦くんとしゃべってた時はな…。けど、お前の声聞いたら…ダメだ…。情けねぇな…』

いいわよ…
あたしの為に情けなくなるなら、とことんなっても。
あたしなんかもっと情けないんだから…
毎晩毎晩、アンタを想って眠れないほど…
情けない、女なんだから…

「行く…。休みが始まるの、三十日からだけど…」

『二十九日の夜から…来れねーのか…?』

「だって…飛行機の時間…たぶん七時台が最終だよ?無理よ…」

『じゃあ、二十九日有休は?』

もう!
アンタあたしの仕事はどうでもいいわけ?

「何言ってんのよ…。ぺーぺーのあたしが、最終日に休めるわけ、ないでしょ…。それくらい内務次長なら、わかるでしょーが」

『もう内務次長じゃねぇ…。今は事務企画部の企画第一グループ長だ』

それが?
今、そんなのどうだっていいわよ!

「そうですか!失礼しました、グループ長殿!!」

あたしがそう言った瞬間、氷メガネは大声で笑い出した。

『んだよ、それは…。ふざけんのもいい加減にしろよ?』

ふざけてんのは、そっちでしょーが!
あたしがこんなに苦しい思いしてるっていうのに、アンタは簡単に休めとか、来いとか言っちゃって!