『会いたい…尚美…』

…え?
まさか…まさか、泣いて、るの…?
嘘でしょ…?
氷メガネと異名を持つ位、冷徹だと思われてるアンタが…

「バカね…。何…泣いてんのよ…」

今すぐそばに行って抱きしめたい…。
あたしは何百キロもあるここから東京までの距離を呪った。

M市に氷メガネがいた時もここから二時間近くかかる事を恨めしく思ってたけど、今思えばかわいいもんだった。

『尚美…正月は、なんか予定あんのか?』

あるわけないでしょ!!
あたしは怒鳴りつけてやりたい気持ちを抑えて言った。

「ないわよ…。あるわけ、ないじゃない…」

『こっちに…来ねーか…?』

こっち?
…って東京に?

『晴彦くんは来るって、言ってんぞ…』

ちょっと…
ちょっと待てーーーー!!

なんで晴彦が?
ていうかあたしに連絡くれないで、晴彦とは連絡とってたのかテメエは!

「どういう、事…?」

あたしは重低音の声で尋ねた。

『んな怒んなって…。尚美に会いたくても…晴彦くんの事をほっとけるわけねーだろ?逆に晴彦くんが大丈夫だったら、後はお前だけの問題だから』

確かに…
そうよ、ね。
晴彦を一人残してあたしだけが行くわけにはいかないもん。