氷メガネが本社に行ってしまってからかれこれもう二週間が経った。

挨拶まわりや来年に向けての準備に追われ、夜は忘年会やらなんやらで結構慌ただしい。
だけどこの年末の忙しさは、あたしが氷メガネの事を考える時間をなくしてくれるから有難かった。

それだけに…
年末年始の長期休みを思うと恐ろしくなってしまう。
仕事が終わって家に帰って一人になる時間も…あたしの嫌いな時間だった。

台所も自分の部屋も…
アイツの痕跡が残りすぎてるから…
嫌でも思い出しちゃうじゃない…。
かといって、受験を控えた晴彦に頼るわけにもいかない。

まだ離れ離れになって日が浅いのに…
こんなんであたし、頑張れるのかな…。

「ただいま…」

アパートに帰ってみると、まだ晴彦は帰っていないみたいだった。
靴がないし…
そういえばチャリもなかったような…
まだ友達と一緒にいるのかな…?

あたしはすぐに夕飯の支度にとりかかる。
今日はすごく寒いからなんかあったかいもんが食べたかったあたしは、シチューを作る事にした。
といってもあたしはアイツみたいに料理がうまくないから、市販のルーを使うんだけどね。

誰が作ったってルーを使えばおんなじよ!
そう思いながら作ったシチューを味見してみる。

やっぱり…
なんか違う…。
当たり前だけど…
アイツが作ったシチューは絶品だったな…。
思い出したらなんだか泣きたくなった。