あたしはすぐに車のエンジンを切って外に出た。
あたしの姿に気づいて、氷メガネも笑顔で車から出てくる。

「ごめん、待たせたな」

「ううん、大丈夫」

そしてあたし達は二人揃ってエレベーターで部屋のあるフロアへ上がった。

玄関を上がると、あちらこちらに段ボール箱が置いてある。
あたしは氷メガネがいなくなってしまう現実に、嫌でも向き合わざるを得なかった。

「ごめんな、散らかってて」

キッチンへ向かうかと思いきや、いきなり寝室に連れて行かれる。

そして…
いつもにも増して激しい氷メガネは、今まで以上にあたしを隅々までいたぶった。

いつものようにドS全開なのに…
どうしてだろう…
氷メガネの辛い気持ちが
その指先から、唇から…
イヤと言うほど伝わってきて…

体は彼の動きに反応して悦びの声を上げていても、あたしの気持ちは悲しみの方により濃く支配されていた。

きっと氷メガネの気持ちも…あたしと同じ…。
泣きたくなるのをグッと堪え、氷メガネの動きにだけ気持ちを集中させた。

どれだけ触れていても、全然足りない…。
もっともっと、一瞬たりとも忘れられないくらい…
あたしの体の隅々にまで刻み付けて欲しい…。

あたしは悲痛な心の叫びを体で表現するしかなかった。