氷メガネと付き合い始めてからあたしは毎日がとても充実していた。
気持ちが満たされていると仕事のモチベーションも上がる。
モチベーションが上がれば効率も良くなって、契約を取れる事が増える。

プラスの相乗効果で、あたしはずっといい成績をおさめ続けていた。

でも、いつかは訪れる。
あたしが恐れるその日が。

そう…
氷メガネとの別れの日。

あたしはそれをなるべく考えないようにして日々を過ごしていた。
だけど十二月が近づいてカレンダーを見るたびに、嫌でも思い出してしまう。
現実から目を逸らすのもそろそろ限界だった。

十二月に入ってすぐ氷メガネの異動は正式に発表された。
オンラインでつながる一人ずつのパソコンにも配信され、見たくもないのに目に入ってしまった。

さすがにこの日だけはいつもの元気が出ずにあたしは早退した。
麻美は事情を知っているだけに多くを語らずとも了解してくれた。
久しぶりに午後からフリーになったあたしは、このまま家に帰っても考えてしまって辛くなるからと適当に車を走らせる。

気が付くとM市まで来てしまっていた。
無意識に会いたいと思っている自分が情けない。

異動が発表され今まで以上に忙しくなれば、氷メガネと平日に会える事は難しくなるだろう。