ただならぬ雰囲気のあたしに、やっとの事で納得してくれた氷メガネはベッドの上できちんと座り直しあたしを見つめた。

「で?何だよ、聞きたいってのは」

「…うん…だからその…さっきの続きで…親御さんの事…」

氷メガネは少しため息をついた後、その重そうな口を開いた。

「…親父は元官僚。おふくろは専業主婦だ。…で…、親父は今関連団体で役員みたいな事やってる。いわゆる天下りってヤツ。けど…そこも色々うるさいとこで…。付き合う人間を選ばなきゃなんねー」

「選ぶ?」

「退職したっていってもこの国の中枢を担う機関に勤めてたからな。今の勤め先も普通とちょっと違うわけよ」

ああ…
そうなんだ…。
なんかよくわかんないけど…
色々うるさいって事か…。

「そんなヤツの子供だから、俺にも付き合う人間を制限してた。けど俺はそんなにツルんでるダチもいなかったしな。途中でそれはやめてくれたけど…。ただ結婚相手だけは…決められてたんだ…。元々親父の後輩だった香菜の親父さんと二人で勝手に決めやがった」

氷メガネの話を聞いているうちに、あたしはにわかに不安要素が浮かんで来る。

「ねぇ…。それだけうるさいって事はさ。単純に考えてあたしの事は反対するに決まってるよね?」

「…………」

黙ってるって事は…
肯定って、事…?

「あたしはアンタより五つも年上。しかもバツイチ子持ちだもんね?」

「そんな事は…関係ない…。言いたくなきゃ、言わなくたっていいぜ?」