いや、だからそういう事じゃなくって…

あたしが目を泳がせて黙りこくっていると、氷メガネはそれまでのドSな言い方から一転し少し寂しそうに言った。

「そう…か…。香菜が俺の事名前で呼んでるんだもんな。同じ呼び方は…イヤに決まってる。そう、だよな…?」

…えーっと…

今あたしはそんな事まったく思ってなくって、呼び方とかそれはどっちでもいいんですけど…。

「おい、いい加減なんとか言えよ?いつまでも黙ってっと押し倒すぞ」

だからー!
アンタがKYなだけでしょーがっ!
何あたしを悪モンにしてんのよ!

「あのさ…。今はそれよりももっと重要な事話してるよね?名前をどう呼ぶとか、そんな事はどーだっていーでしょ?それより、香菜さんとアンタの親の事の方が…」

あたしの言葉をまたもや氷メガネのドS発言が遮る。

「それは俺がちゃんと考えてっから。お前はなんも心配すんな。俺はお前がなんで俺の事名前で呼んでくれねーのかって方がすっげー気になんだけど」

全く…
どこまでも自己中なんだから…
そりゃ確かにアンタは香菜さんの事なんとも思ってないからいいかもしれないけどね?
彼女にしてみりゃそれだけで終われないと思うわよ?

ってなんであたし、ライバルの気持ちを代弁してるかなー…。

「尚美、俺の命令。今から俺を名前で呼ばねーとその場ですぐキスする」

「はぁっ!?アンタ、どこまで自分勝手なのよ!?」

あたしが怒鳴っても一向に怯む気配がなく…

「キスされたいなら呼ばなくてもいーけど?別に俺はどっちでもいーぜ。どっちにしたって俺には好都合」