そしてその震えをおさめるように氷メガネはすぐ席を立ち、そばに来て優しくあたしを抱きしめる。
その腕のぬくもりであたしはまた泣いてしまう…。

氷メガネは無言のままでも、その腕から伝わる熱でなぜか彼の気持ちも伝わってくるようで…。

「ごめ…ごめん…なさい…。ほん…とに…泣いて…ばっかり…で…」

しゃくりあげすぎて言葉がうまくしゃべれない。

香菜さんに言われた事が悔しいからなのか、氷メガネが優しくて嬉しいからなのか。
自分でも自分の涙の意味がよくわからないままただ泣き続ける。

氷メガネは何も言わず、ただ優しくそんなあたしの背中をさすり続けてくれた。

ようやく落ち着いた頃、氷メガネはキッチンへ消え、すぐにカップを持って戻ってきた。

それはあの甘さ控えめのココアだった。
あたしの気持ちを鎮めてくれる効果絶大なモノ。

あたしが一口飲んだ所を見てようやく氷メガネが口を開いた。

「香菜が…会社に来た。お前の所に行ってきたと、会ったと言ってな。嫌な思いをしたろ?ごめんな…」

あたしは涙で声を出す事ができずただ…首を横に振り続ける。

「何があっても…俺の気持ちは変わらないから…。信じて、くれる?」

今度は縦に首を振る。
言葉にして紡ぐ事がこれほど威力があるなんて思ってもみなかった。