「いいのか?」

氷メガネはあたしの言葉を覆すように晴彦に尋ねた。

「いいよ、別に。なんか話したい事、あんだろ」

なんか…すごいよね、この二人…。
読心術を操る男が約二名。

「悪いな…。お言葉に甘えて、今日はうちに泊まらせる…。明日は直行させるから、朝も帰んないけど…大丈夫か…?」

「はいはい。ダイジョーブっす」

「ダメよ!行かない…」

あたしが突然大声をあげたから、驚いた二人が同時にあたしを振り返る。

「は?母さん、何言っちゃってんの?ちゃんと話さないと知らねーぞ。後で泣くことになっても」

「ちょっと、どういう意味よ!?」

「おい、いい加減にしろ。晴彦くんに当たるな」

氷メガネはあたしの腕をつかんだ。
そしてそのまま無理やりあたしを外へ連れ出した。

「離してってば!」

「嫌だ」

「行かないわよ!絶対に行くもんか!」

あたしはまるで子供がだだをこねるかのように泣きながら言った。

「落ち着け。それ以上騒ぐと今すぐここでキスするぞ」

「…………」

まるでうまく手なずけられた犬だ。
コイツはあたしが黙るツボまで心得ている。
あたしは大人しく氷メガネについていくしかなかった。

いったんうちに入り、サッと出掛ける準備をする。
晴彦は何も言わずあたしを見つめていた。

「晴彦…。…一人でダイジョブ?」

あたしが尋ねると晴彦は真剣な顔で答えた。