「じゃ、俺は車にいるからな。あんまり待たせんなよ。俺、気短いの知ってんだろ」

氷メガネはそう言って車に戻った。
振り向くと晴彦がニヤニヤしながらあたしの方を見ていた。

「もう!何よ!」

「いや、別に」

晴彦にまで急かされてあたしは猛スピードで準備した。

まるで追い出されるように家を出て、氷メガネの車に向かう。
慌てて乗り込むと、運転席で氷メガネが腕時計を見ながら言った。

「ジャスト七分。まあ早い方だな」

ほんとにもう…コイツは!

ムカついて文句のひとつも言ってやろうとしたあたしの口を、氷メガネが優しく塞いだ…。

「ダメだ…。とてもうちまで我慢できそうに…ない」

氷メガネはそんな恥ずかしい事をサラッと言って、車を急発進させた。

「ちょっと!スピード出し過ぎ!!もうちょっとゆっくり走んなきゃダメだって!金曜日は検問やってるよ!捕まっても知らないからね!」

あたしの怒鳴り声を聞いて少しだけスピードを緩めてくれた。

「えらく素直じゃない…」

「あとで覚えとけ」

「へっ?」

「俺に命令した罰。たっぷりいじめてやるからな…」

なんですか、その不敵な笑みは…。

どうやらまた、アンタのドS魂に火をつけちゃったみたいね、あたし。