いよいよ黙ってられなくなったあたしは氷メガネに向かって言った。

「ちょっと、いい加減にしてよ!なんで、そんな事、アンタに言わなきゃいけない…」

あたしが言いかけた時、晴彦が話し始めた。

「いや…別に…大丈夫ですよ…。今までだって、会ってても別になんも聞いてこねーし。
会った時にちょっとこづかいくれるぐらいで、悩みとか、相談とか全然してこなかったし」

「相談とかはやっぱ、友達?」

「うん…。けど、どうしても友達じゃわかんねー事は、ソイツの親父に聞いてもらったりは、したけど…」

そんな…話…知らない…。

なんで?
あたしにはそんなに言えない事なの…?

あたしは怒りを通り越して悲しくなっていた。

氷メガネはそんなあたしに気づいているのかいないのか、まさかのセリフを晴彦に向かって吐いた。

「これからは…俺に言ってくれる気ない?」

はい?
コイツ、今までで一番KYな発言をしたわね!

あり得ない、絶対あり得ないから!
母親のカレシに相談する息子がどこにいるってのよ!

「いい加減に…」

あたしは限界を超え、氷メガネに怒鳴ろうとした。

が、そこへ聞こえてきたのは晴彦の信じられない一言だった。

「いいっすよ、メルアド交換します?」

まさかの展開についていけず目を泳がせる。
そして氷メガネは晴彦の隣に行き、携帯を出して楽しそうに話し始めた。

もう、いっか…。
二人が親密になるのはあたしにとっても悪い事じゃないから…。
これ以上とんがる必要ないじゃない。

あたしはそう思いながら微笑ましく二人を見守っていた。