「晴彦くん、焼き加減の好みは?」

「俺、結構生っぽい方が好きなんすよ」

えっ!そうなの!?
母親のあたしが知らないんですけど…。
晴彦の言葉に氷メガネが嬉しそうな反応をした。

「おーっ!わかってるじゃん!牛肉はレアに限るぜ。なかなか見どころあるな、キミは」

エヘヘ…と晴彦も照れている…。

どうなのよ、こういうのって。
素直に喜んでいいんだよね?

普通、母親が付き合ってる男と会うのって抵抗あったりするんじゃないの?
でも晴彦の様子を見る限りそんな感じじゃない。

演技してるんだろうか…?

あたしはつい、二人を観察するように見つめてしまっていた。

そんなあたしの視線に気づいたのか、氷メガネは、

「ごめんごめん、おあずけだったな」

と言いながらあたしのお皿にお肉をのっけてくれた。

お肉の事じゃないわよ…。
でもお腹空いてるから、いいけど。

あっ!
でもあたし、生焼け苦手なんだよね…。

そしてあたしが口を開く前にまたもや氷メガネがささやいた。

「お前のは焼きすぎるくらい焼いてあっから」

「あ…どうも…」

ほんとになんでわかんのかねー?

あたしが肉をほおばっていると、晴彦がクスリと笑った。

「何?どうしたの?」

「いや…なんつーかさ。すっげーおもしれーんだけど、おたくら二人」

「は?どーいう事?アンタ、母親に向かって何よ、その言い方は」

あたしはここぞとばかりに母親風を吹かせて言った。

すると氷メガネが横やりを入れてきた。

「おい!晴彦くんはもう大人だ。いつまでも子供扱いすんなよ」