「ビール飲みたかったから、スネてんすよ、きっと」

晴彦がニヤニヤしながら言った。

「そうなのか?運転もあるからと思って勝手に頼んじまった。ノンアルにしとけば良かったか…。悪かったな、気づかなくて…」

「いや、いいっすよ。この人、結構酒グセ悪いんで」

ちょっとちょっと、晴彦、何言い出すのよ!
そんな事はカミングアウトしないでいいから!

「ふーん…そうなんだ。晴彦くん、詳しく教えてもらっていいかな?」

だから、ちょっと待ってってば!

あたしが慌ててとめようとするのも虚しく、晴彦が今までのあたしの酒の失敗を話し始めてるじゃないか!

そしてその話を聞きながら氷メガネがウケているという…構図。
まあ、いい雰囲気なのは…間違いないわね…。
敢えてこの雰囲気を壊す必要も、ないか。

あたしはそう思いながら二人を見守っていた。

注文したものが次々と運ばれてきた。

あたしは当たり前に肉を焼くのは自分の役目だと思い、すすんでトングを持つ。
ところが、隣の氷メガネがそのトングをスッと取り上げた。

「え?なんで?」

「多分俺のほうがうまいから」

あーそーですか!
そうですよね!
きっとあなたの方が、うまいですよ!

まあ確かに料理がうまいのは証明済みだし…。
仕方なくあたしは言う事を聞く。