焦るあたしをよそに相変わらず涼しい顔をした氷メガネがサラリと言ってのけた。

「えっと…カルビとロースとハラミ、それぞれ三人前と…あ、全部特上で。それから塩タン二人前とキムチ盛り合わせ、とりあえずそれで」

いやいや、全部特上って、アンタ…。
さすがの晴彦も唖然として氷メガネを見ている。

「お飲み物はどうされますか?」

あたし達の雰囲気などもろともしない若い女の店員が聞いてくる。

「あ、そうだな…。俺は運転あるから…ノンアルのビールをグラスで。で、ウーロン茶と、晴彦くんは?」

「あ…俺、コーラで…」

「じゃ。コーラ」

店員は注文を繰り返して去って行った。

あの…ウーロン茶って勝手に頼んでたけどあれあたしのだよね?
ほんとはノンアルビール飲みたかったのに…。

そこはツーカーじゃないのかよ…。

沈んだ気分になるあたしに気づいたのか、氷メガネが話しかけてきた。

「ん?どした?気分悪いのか?」

「い、いや…そういうわけじゃ…」

どもるあたしの顔を覗き込んでくる。
だから、近いって!
晴彦が見てるんだからちょっと離れてってば!

心の叫びを実際に言おうかどうか迷う。