オロオロするあたしとは対照的に、いつもの冷静さで氷メガネは晴彦に話しかける。

「晴彦くん、何が食べたい?」

いやー、晴彦がほぼ初対面なアンタと普通に会話するわけないよ。
あたしはそう思って助け船をいれようとした。

でも晴彦は…

「そうっすね。やっぱ焼肉かな」

と普通に返した。

あれ?
今フツーにしゃべったね?

「やっぱそうだよな。どっかおススメとかあんの?」

「あーダチの話だと、Y町にある"ミョンドン"ってとこがいいらしいっすね。けど、あそこ結構高いみたいっすけど…」

「金の事は心配すんな。遠慮しないでいいから、そこ行くか?」

「じゃあお願いしゃーす」

何なの、このフツーにダチみたいな会話は…。
初対面でかつ、母親のオトコとの会話とも思えぬ…

あたしは一人取り残されたような気分になっていた。

店につくと結構お客さんが入っている。

氷メガネは「三人。喫煙席で」と店員に告げる。

あたしの為に喫煙席?
まるでツーカーだよね…。
あたしは一人でニヤける。

そしてメニューを見たあたしはその値段に目を剥いた。
ヤバい…。
普通の店の倍はしてるんですけど…。
確かに晴彦の言う通り高いお店なんだ…。
メニューで顔を隠しながら晴彦を盗み見ると、やっぱり迷ってるように思えた。

どうすっかな…。
かといってホルモンばっか頼むのもわざとらしいし…

迷っていると店員が注文を取りに来てしまった。