あたしはそうなったいきさつを富美子に話して聞かせた。

話の途中で、富美子がクスクス笑い出す。

「何?どうしたの?今の話ん中にそんな面白い所あった?」

「ううん、違うの。あたしさ、ちょっと意地悪しちゃったから。でも、おかげでいい方に転んだみたいね…」

富美子はまだクスクスと笑い続ける。
意味がわからないあたしは、突っ込んで尋ねた。

「ちょっと、意味わかんないんだけど!」

「ああ、ごめんごめん。実はね、尚美ちゃんとしか話す気ないって言われてちょっとムカついたのよ。きっと内務次長は尚美ちゃんの気持ちに気づいてるって思ってね。
でも、そうやって余裕ぶちかましてる姿見てたらなんか無性に腹が立って。言ってやったんだ」

「言ってやったって、何を?」

「うん。実は矢部所長が、尚美ちゃんの事狙ってるみたいだって」

あたしは思わずコーヒーを吹きこぼした。

「やだ!尚美ちゃん、大丈夫?」

慌ててハンカチを出す富美子に、大丈夫と言いながら続けてもらう。

「矢部所長は単身赴任だから寂しいみたいだし、尚美ちゃんもすごく所長を尊敬してて、頼ってるみたいですよって。そしたらさ、いつも涼しい顔の内務次長が珍しく顔色変わってね。面白かった~」

そんな荒業をしていたとは…
この子、見かけによらず意外と策士だったりして…。